■エステってゆーのか〜参考になるかどうか判らないサフレス仕上げについての一考

◆はじめに◆
 ドルパ4で偶然にも荒木元太郎氏製作のユノスとボークスの量産版を並べて見比べる機会があった。当日ユノスを購入された方が荒木氏のところに持ってきた時に、たまたま居合わせたので色々お話を聴けたのだ。当日会場に展示してあったレプリカのボークス版ユノスは、出来が今ひとつだったのだが、カスタマイズでずいぶん良くなることがわかった。そこで、カスタム前提で購入を決意した。当然オリジナルのユノスのイメージに近くなる荒木氏の手による「ユノスねこみみセット」は、黒髪で購入した(絵本に出ているあの「猫耳ユノス」にするための、耳と首輪と尻尾付きパンツのキットだ)。で早速、俺ユノスにするべく、気に入らないところを改修しだしている。特にボークス版の塗装が気に入らないので塗料などを自分なりにアレンジした、サフレス塗装で仕上げてみた(写真1)。

写真1 キャストの違いによる透明感の喪失は、いかんともしがたい・・・
ピュアスキンユノスでも出てくれれば、また話は別だ。

◆道具類はありきたりで◆
 エアブラシは必需品。リニアコンプレッサーL5がお勧め。その他レギュレーターとエアフィルターもあった方が良い。自分用には買い足して使っている。
 塗料はサフレス仕上げの特徴として、大量の「透明クリア」を使う。下地用にラッカー系(油性)、彩色部分で水性と使い分けている。サフの代わりに、メタルプライマーか、ソフト99のバンパープライマーがあった方が、塗膜の密着性が向上して塗膜が禿がれにくくなる。無くても別にかまわない。他、彩色用にアクリル絵の具を使った。溶剤は、Mr.カラー薄め液など塗料にあった物が必要なのは、言うまでもない。
 工具類は、「いわゆるSDのエステ」で使ったのがあれば、問題ない。においの問題があるから、塗装ブースは必要。換気扇付きの塗装ブースで10000円位からある。もちろん、自作でもかまわない。

◆まずは、パーティングラインを消す◆
 ここのところは、SDとかわりなし。とにかく削る、ひたすら磨く、ただそれだけ。道具類も、処理の仕方も同じ。ただし、仕上げの研磨は#600程度に止めること。あまり細かい番手まで磨いてしまうと、アンカー効果が少なくなって塗膜の食い付きが悪くなる。ここでは、多少の研磨傷は大目に見てかまわない。気泡などの処理は、瞬着で埋めたあと、磨いてしまえばOK。だいたい、1日2時間位ちんたらやってここまでで5日くらい。面倒だったら、ボークスの里帰りのパーティング落としに出してしまえは、OK。税別5000円で、約2週間だ。

◆離型剤落とし〜以降は換気には十分注意するべし!◆
 中性洗剤やクレンザーで洗うのは、乾くまで時間もかかるしいちいち面倒だ。そこで、100円ショップで売っているPP(ポリプロピレン)製のボールにパーツを入れて、模型店で売っている市販のキャストクリーナーを吹きかけて離型剤を流し落とすと金はかかるが手っ取り早い。一応キャストクリーナーは高い(1本¥1000位)ので、呉羽工業のブレーキクリン(特売の時は、徳用サイズ2本で¥600位)で代用するのも良し。ただし、キャストクリーナーはナフテン系で離型剤落としには強力だが、ブレーキクリンはイソプロピル系なので、若干落ちが悪い。そこでブレーキクリンを使うときは、最後にアセトンをかけて完璧に脱脂する。それも面倒というならば、パーツをPP製のボールに放り込んで、上からアセトンをひたひたになるまで注ぎ、10分位どぶ付けしておくと離型剤が勝手に落ちる。作業の時は使い捨ての手袋をして手を保護したほうが健康のためにはよろしい。ボールに溜まった液は、塗装で失敗したときの塗料落としに使えるので、ガラス瓶に移して取っておくといい。

◆下地作り〜全てスプレー缶でできちゃう◆
 離型剤を落としたら、サーフェーサーの代わりにバンパープライマーを薄く均一に吹き付けるべし。厚めに吹いて垂れちゃうと乾燥したときにそこだけ黄色くなるので注意しよう。もし、黄色い部分ができたら仕方がないので、シンナーなどで塗料を落として、再度吹き直す。ホントに塗ってあるの?ってくらい薄く吹くのがポイント。
バンパープライマーの代用としてメタルプライマーを使う場合は、なるべく濃いめで吹き付ける。スプレー缶タイプの物があるので、面倒ならそれでも良し、効果に差はない。差があるのは値段だけ。面倒だったら別に塗らなくてもいい。前項の油膜落としが完璧ならなんら問題は無い。
 塗膜が乾いたら、下地用に油性の(ラッカー)透明クリア(艶有り)を吹き付ける。これもスプレー缶で問題ないってゆーのかースプレー缶の方が作業が早い。3回くらい吹きつけと乾燥を繰り返して、表面にテカンテカンの光沢ある厚めの塗膜が出来たらおしまい。厚みにムラがあろうが、塗料が垂れようが気にしなくてかまわないが、均一な厚みで垂れがないほうが、次の作業が楽なのは、お約束。
 んで、十分乾燥したら、カーモデルよろしくクリア層の研ぎ出しをする。耐水ペーパー(エメリー紙)か、スポンジヤスリで水を付けて研磨する。塗膜は柔らかくてすぐ削れてしまうから、削りすぎに注意しよう。#600から始めて#1000程度まで全体を磨いて、凹凸や傷を消す。つるつるのお肌になったら、OKだ。傷を消そうとしたら下地まで削れそうな時は、水分と削りかすを取ってから、傷を埋めるようにクリアーを重ね吹いて、再び作業する。
 磨き終わったら、柔らかいスポンジに台所用洗剤を含ませて軽く擦り、温水で削りかすと手の油を洗い流してやり、乾燥させる。この時点で、表面はややつや消し気味になっているハズ。
 十分乾燥したら、再度艶有りの透明クリアーを吹いてやる。今度は、ムラや垂れは厳禁だ。全体に光沢を取り戻したら終了(写真2)。ピュアスキンボディならこの下地作り作業はいらない。

写真2 左手の場合。左の写真は、まだ吹きつけが不足している。右の写真のように光沢を取り戻したら終了。

仕上げに、つや消しの透明を薄く吹きつけて、均一に艶を消し、表面状態を整える(写真3)。

写真3 写真2と比べて艶が消えている。

 以上で、下地作りは終了。そう、ここまで読むと判るように、「SDのエステ」と大差はないので、SDユーザーなら出来るはず・・・だよね。

◆彩色工程〜エアブラシはぜってー必要かも◆
 この工程は簡単。イエロー・オレンジ系もしくはイエロー・ブラウン系のシャドー吹きの後に赤系でグラデーションをかけるだけ。うん、これだけ。実に簡単なのに失敗したら振り出しに戻るというとんでもないトコではあるんだけど。(写真4,5)

写真4 イエロー系の塗装が終了したところ。キャストが元々赤っぽいので、黄色を強めに吹いた。

写真5 更に赤系を塗り重ねて肌色の再現を試みた。

 で、今のところ塗料には、アクリル系クリア透明(田宮のアクリル塗料を使っている)をバインダーに、アクリル絵の具(ドクターマーチン・ピグメント・・・ネイルアートに使われたりするやつです)を溶いたものを使います。普通のフィギュアのサフレス塗装と違うところは、光耐久性を重視するためにカラークリア塗料や蛍光色を使わないとこかなぁ。濃度は、1回吹いたくらいでは色が着いたかなって程度にまで透明クリアで薄める。色と透明クリアとの比率は、1:20位。何回も吹き重ねることになるけど、こちらの方が失敗が少ないようですね。肝心の塗料の調合比率は、ベースのキャストの色にも左右されるのと、白人系に仕上げたいのか、東洋人風に仕上げたいのかで変わってくる為、何回か試して自分の気に入る色を作るしか手はないでしょう。例えば、写真6は、写真1と同じ配合比で調合した塗料を使って仕上げてあるのですが、ベースが、「美白」であるがために、ユノスと並べるとかなり白が強調されて白人系に近い仕上がりとなってます(写真がへたれで判りにくいかもしれませんが)。

写真6 これに更に色を重ねてやれば、普通肌から仕上げたのと同じ仕上がりにはなる。オプションパーツで組み立てて、塗装を前提とするならば、人気がない故にパーツ類が入手しやすい美白で揃えるのも良いかもしれない。ちなみに「ののレイ」に使ったのは、このボディ。市販品で入手できるボディでは、美白ピュアスキンが一番最適だとは思う。

 さて、塗装が終了した時点で、肌は均一に光沢感を取り戻しているはず。この上から艶消しクリア(半光沢くらいがちょうど良い)を吹いて、全体の艶を落ち着かせたらほぼ終了だ。反則技だが、このときの艶消しクリアにはラッカー系を使うと彩色部分のムラを薄くすることが出来る(塗膜がシンナーで溶けて混ざるのだ)のでお奨めだ。

◆後はメイクだけ◆
 完全に塗料が乾いたら眉や口紅などのメイクをして、終了。今回唇の塗装では、同じ赤系塗料をエア圧を0.5kgfにして、ニードルも半分閉じて1cm位の距離から何回か重ね吹きして厚くして仕上げた。
 関接部に自立セットのように革を貼るとパーツ同士のこすれによる塗膜の削れが減るのでできればしたほうが良いでしょう。
 市販の睫毛はイメージに合わなかったので、創作人形的なやり方で植毛するが、神経スリへらしそうになって断念、結局もう少し簡易的な睫毛を自作して使用した。(最近は睫毛の種類も多くなったので、自作する必要は無いと思う。)

写真7 荒木ユノスのオリジナルを重視するのならば眉毛のモールドは削らない方が良いと思う。自分のは削っちゃったけど・・・(笑)。セイナもアイカも元はおなじなので、衣装と鬘などの好みで選べば問題なし。もともとはオプションパーツの交換で両方楽しめるようになっていたらしいのだが、販売元の意向で2体になったらしい。結局絵本は付属されなかったし・・・まぁ、今から見るとちょっと恥ずかしいかもしれん。

◆終わりに〜いわゆるひとつの私見ですが◆
 肝心の彩色工程の部分では、実は基本のエアブラシの使い方がポイントです。このやり方によるサフレス塗装の作業上のポイントは、シャドーと色の重ね具合で仕上がりが左右されることと、大きく失敗したら下手に修正しようとするのでなく、失敗したパーツはシンナー漕へどぼんと浸けて最初から塗装した方がはやく綺麗に仕上がるという点くらいです。小さな失敗は、メラニンスポンジで修正することもできるので、あまりひどい失敗じゃなかったら、それで削りなおすのも良いかも知れません。それと、何度失敗してもやり直しがきく(やり直すたびにキャストの油分も抜けるという、ありがたい副産物もある)ので、初心者でも安心してトライ出来るでしょう。

 サフレス塗装について実際にドルパ4で荒木氏より教えていただいた工程は、「ペーパーで磨いたら艶消しクリアを吹いて、磨いたところとそうでないところの色調を合わせた後、艶有りクリアを吹いて更に艶消しクリアーを重ねる、塗装はアクリル系塗料を使っている」ということだったので、塗料の選択など結構適当なアレンジが入っています。荒木風のシャドーの入れ方など一番参考になったのは、手持ちの完成フィギュアとイベントで撮ってくる写真と、写真集「COM'P・X」だったり。今ならユノアとかも運がよければ購入できるので、わざわざ覚える必要もないことなのかもしれませんが。
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コンテンツ製作:2001年6月1日
改訂:2004年1月4日